第198回
ポアロにハマる

去年のこの時期は歴史小説(戦国時代中心)を読み漁っていたのですが、今年はひたすらアガサ・クリスティ氏のポアロ作品を読みまくっていました。上の写真が去年末から昨日までに読破したポアロ作品の山。ついに『カーテン』を読んでしまった。なんだか寂しいなぁ・・・。とりあえず読破記念という事で、ゲームと関係ない話で恐縮ですが、今回の更新は個人的にお気に入りのポアロ作品(5作品)の感想でもちょろっと述べてみたいと思います(むしろ読み返したくなった時の自分参考用かな)。

BEST1

ABC殺人事件

誰もがポアロ作品でお奨めするであろう大傑作。めちゃくちゃ面白かった。ラストの真犯人を指摘する件は、本当に読み応えがあります。ぶっちゃけ、ビックリしました。クリスティ氏の決まり手ではありますが、ミスリードが本書では特に巧みな気がしましたね。殺人事件が全編を通して何度となく発生する為に、シリーズで良く散見される「中盤の聞き込み調査における退屈さ」が全く無いのも良かった。犯人の知能犯ぶりは全作品でも特筆すべきものがありますが(実際、本書のトリックは称賛もの)、それをポアロがスカッと爽やかに解決せしめるもので、読後感も実にイイ! ヘイスティングズもちょっとだけ活躍するしね! ポアロ作品に興味があって最初にどれを読もうか悩んでいる方に、本書を心からお奨めいたします。

BEST2

エッジウェア卿の死

犯人を問答無用でブン殴りたくなる作品。クリスティ作品は比較的、凶悪犯人を描かないと言いますか、どこか読み手に同情心を植え付けるような表現が、そこここに犯人に付随している、そんな印象を持っていたのです。ぐわっ! シリーズを通して、本書には究極にムカツク犯人が登場します。同情の欠片も湧かない、「1発殴らせろ!」と思わずにはおかない、腹ただしい犯人が出てくるのです。まぁ、そこが本書の最大の”キモ”とも言えます。そんな輩をギャフンと言わせる、ポアロの名推理が際立ちますからね(とはいえ、ポアロ自身は解決に至るまで随分、苦戦していたっぽいですが。車にひかれそうになるし)。『ABC』に負けず劣らずの知能犯だった可能性もあるのかもしれませんが、それ以上にラストの手記がねぇ・・・。ヘイスティングズは本書ではいるだけ番長です。

BEST3

メソポタミアの殺人

いわゆる中近東ミステリシリーズでは一番好きです。トリックがなかなか面白く、ストーリーも最後まで中だるみ無く楽しめました。登場人物がそれぞれ個性的で印象深く、なにより、本書はその登場人物の1人である看護婦さん視点で綴られているので、他のシリーズとは一風変わった趣があります。ポアロに対する正直な感想も笑えますしね。おかげであまり厚かましくない(?)ポアロが見れますよ。ただ、塩酸の濃溶液を飲まされた、あのキャラが可哀そうでな・・・。犯人には同情する点もあるのですが、そこだけが気になりどころでした。

BEST4

五匹の子豚

「16年前の事件の真相に乗り出す」、そんな前置きがいやにカッチョイイ作品。いや、それ以上に16年前に死刑判決を受けた、依頼人の母ちゃんがすげぇ。最後まで無言を貫いた彼女の意思の強さが凄まじいのです。その結審した死刑判決を覆す為に、知力の限りを尽くすポアロも実に実にイカしています。よくぞ、真相を暴いてくれたと拍手喝采したくなる作品でした。犯人はクズだけれども、あれで罰は受けていたのかなぁ。

BEST5

ビッグ4

無理矢理、幾つかの短編を1つの物語に仕立て上げた都合上、いまいちメインストーリーは面白くありません。端的に言えば、「奴はビッグ4の中でも最弱・・・」と言いつつ、実は4人とも最弱だったってオチ。ロサコフ伯爵夫人は違うか。そんな作品をBEST5に上げた理由は、本書がポアロとヘイスティングズの友情を丁寧に綴っているからです。スパイ側にとっ捕まったヘイスティングズが、自らの危険を顧みずにポアロに逃げるよう叫んだシーンも良かったし、その後、無事に解放されたヘイスティングズに向かってポアロが呟いた台詞も実にイイ! 感動しました。シャーロック・ホームズの短編『三人ガリデブ』が好きな人にならお奨めです。

以上です。因みに、『ABC殺人事件』以外で良く話題に挙がる『オリエント急行の殺人』と『アクロイド殺し』の2作品をベストに選ばなかった理由は、『オリエント』はシリーズで唯一、読む前にネタバレを食らっていたからで(それでも十分おもしろかったですが)、『アクロイド殺し』は個人的にアンフェアだと思ったからです(本書に関しては犯人の扱いについて、フェア・アンフェア論争が起こったのです)。ほら、当方みたいな心の綺麗な人ほど『アクロイド殺し』はアンフェアと指摘すると・・・思うなぁ(チラッ)。

ポアロ好きが高じて、DVDセットも2つほど購入しました。デビット・スーシェ氏のポアロは本当に素晴らしいなぁ。熊倉一雄氏の声も最高。殆どのポアロ作品が映像化されているそうなので、出来る限りDVDも揃えたいものです。ラスト『カーテン』のドラマ化はこれかららしく、見たいような見たくないような・・・。

【 2012/05/19 】

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