ビーフストロガノフの
ゲーム感想日記
ゲームプレイの感想を中心に、徒然なるままに書き殴り。たまにイラストつき
オーガストのソフト『夜明け前より瑠璃色な』が思いのほか面白かったもので本作も発売日即購入に踏み切った訳ですが、プレイし終わった段階での感想をハッキリ申せば、『よあけな』と比べると一枚も二枚も劣る作品でした。最大の問題点は最後にプレイする事になる真ルートの出来。そこに至るまでの個別ルートでも疑問に思う点は幾らかあったものの「終わりよければすべてよし」の言葉通り、真ルートの展開でキチッと締めてくれれば問題は無かろうと話を進めてみた所、強引とも取れる力技での展開に終始し、せっせと蒔いた前振りも驚くほどアッサリと片付けられ、何の感動も得られぬままスルスル進んでエンディング曲が流れて終わってしまったのです。おかげでプレイ後に心に残るは「あー良かった」という満足感よりも「ちょっと都合がよすぎないか？」という何ともスッキリしない疑問符ばかり。ハッピーエンドで締めたのにも拘らず、ちっとも納得できない理由はもちろん○○様の扱いにあるのですが、前振りでの陰湿な性格を強くプレイヤーに刷り込みすぎた為に、あの程度で簡単にオチが付けられては正直、心のやり場に困ります。まずもって桐葉ファンは納得できないでしょう。あんなに苦労したのに実情はこの程度ですから、彼女のルートでの境遇を思うと憤りしか沸いてきません。もし真ルートをあのオチで纏めようとするならば、マレヒト絡みをもっと最初から強く打ち出すなりして○○様のイメージを少しは改善させておくべきだったのではないでしょうか？
すみません、いきなりプレイした方にしか分からないネタで憤慨してしまいましたが、とにかくストーリーが薄いのはまぎれもない事実。本作の根幹を担う吸血鬼ネタが驚くほど本編に生かされていないのはコレの最たる理由でしょう。ＴＹＰＥ－ＭＯＯＮやニトロプラスがこのネタでソフトを作ったならば血沸き肉踊る大スペクタクル活劇モノになるのは間違い無い所ですが、オーガストではせいぜい主人公とヒロインの間に立ちふさがる障害扱い程度。これでは伝統のほのぼのストーリーに大した起伏を生み出す事が出来ず、終わってみれば心に何も残らない平々凡々とした作品になってしまった気がするのです。
また、個人的に気になったのがメインヒロインの扱い方。前作ではメインヒロインをハッキリ固定した事が不満の１つに挙げられていたので、本作はその扱いを随分軽くしたのか、メインにしては瑛里華はおとなしい印象でした。特に吸血鬼ネタが絡むとテンションが急落してしまうので、変わって相方である主人公が頑張るほか無くなるのですが、肝心な場面でもどちらかというと主人公や他のキャラに頼る事が多くなる為に彼女の存在が驚くほど希薄になってしまっているのです。これでは言い方が悪いですが「数合わせ」で存在する他のヒロインとの差別化は無きに等しく、ストーリーを牽引する立場に相応しいとも思えず、恋愛ゲーとしての萌えカタルシスにも欠けます。真ルートを彼女メインで行くとするならば、吸血鬼である利点をもっとフルに生かしてメインヒロインの面目躍如となるに相応しい展開かつ、他のヒロインに振り向く事すら不実だと思える程の大恋愛ストーリーにして欲しかった所です。今思えば、フィーナはその点で最強のメインヒロインでしたね。
ヒロインネタでもう１つ。当方は前作をＰＳ２版でプレイしたので本作が始めての１８禁版だった訳ですが、とにかくエロシーンが多いのです（オーガストってこういうメーカーだったのですね）。ヒロインにつきオマケを含めると３回はＨシーンがあるので「エロゲーはＨシーンがあってなんぼ」というプレイヤーには何気に満足できるかもしれません。ただ、これは当方が感じた事なので他の方がどう思うかは分かりませんが、どのＨシーンも主人公とヒロインの関係がそれほど深くなっているとは思えない段階で始まってしまうので、とにかく違和感がありました。結局、全Ｈシーンをスキップで素っ飛ばしましたし。愛の無いＨシーンには興味がありません。あのぐらいの関係ではどう考えてもキスシーンが精々でしょう。素直にＣＳ版を待てば良かった。
ＣＳ版の話が出たのでついでに。ＰＣ版をクリアしたばかりではありますが、既に当方はＣＳ版の購入を決めています。おそらく発売されるであろうＣＳ版はこれまでの経緯から察するにキャラクターが増えているのは間違いないでしょう。実は当作品がイマイチ面白くない理由の１つは臨場感の欠如にあると思っています。つまり物語を彩るキャラクターの数が少なすぎるのです。ヒロイン連中と主人公と生徒会メンバーぐらいでは学園モノで締めるならまだしも、吸血鬼ネタで行くには幾らなんでも役者不足です。こんな箱庭世界で面白い作品ができるハズがありません。決して詰まらない訳では無いのですから、あとホンの少しの努力で大化けしそうな予感がするのです。キャラが増えればそれだけ作品に説得力が増すハズですしね。どの程度ＰＣ版本編を弄るのかは分かりませんが、ＣＳ版の＋αの出来を心から期待しています。
文句ばかりになったので少しは良い所を。音楽は相変わらず高いレベルにありました。ボーカル付きの曲がまた複数あって、特に真ルートのエンディングでかかった曲だけは高評価を与えたい所です。システム周りも実に扱いやすくインターフェイスデザインも秀逸。この辺りの造りに手を抜かないのは本当に好印象なのですが、その姿勢をシナリオでも見せて欲しかったですね。
という感じで『ＦＡ』の感想を述べてみました。マイナス意見ばかりですが、あまりに発売前から本作の出来に期待し過ぎて、返ってその反動がこちらに出てしまった感じです。『夜明け前より瑠璃色な』と比較したのも問題があったかもしれません。上でも言及していますが、詰まらない訳では決してありません。人によっては高評価を付けるのも確かでしょう。ただ、クリアするのに５～６時間はかかる程の尺幅を真ルートに持たせる気概があるならば、あの程度のシナリオで妥協して欲しくなかった。本当に勿体無いと思います。ＣＳ版で是非、真なる『ＦＡ』を見せてくれる事を心から願うばかりであります。
◆ お気に入りＢＥＳＴ３
BEST1
千堂瑛里華 ＣＶ：観村咲子
本作のメインヒロイン。序盤の完全無欠っぷりが嘘のように後半は凹みまくりで気苦労が耐えない訳ですが、彼女の相方である本作の主人公が思いのほか好青年で、これと決めた相手にはとことん尽くすナイスガイなのですね。後半はもうそれこそ元気の無い瑛里華を盛り立てる為に八面六臂の大活躍。ノーマルではとうとう○○になってまで瑛里華を想いやる忠信ぶり。正直、瑛里華には勿体無いぐらいです。吸血鬼ネタになると途端に主体性が無くなるので、なんとなく主人公だけが頑張って瑛里華は単に彼の好意に胡坐をかいている印象しか持てないから・・・。真ルートではメインヒロインの面目躍如となるべく彼女の大活躍が描かれると思っていたのですが、それも夢のまた夢でしたね。なもので、当方の中ではノーマルエンドこそが瑛里華と主人公の”真”エンドです。これは譲れない。
BEST2
紅瀬桐葉 ＣＶ：楠鈴音
まずもって気になったのが、主人公に惚れる動機があまりにも薄いという事。彼女の境遇を考えると、あの程度の絡みで好意を持つ事自体がありえないと感じてしまうのです。更に真ルートでその疑問が顕著になるので、一体何の為に彼女がヒロインとして存在しているのか不思議に思うほど。その一方で無駄に魅力的な性格付けがなされている為にそうそう邪険にする事も出来ず、おかげで彼女の境遇が明らかになるにつれて何とも言えない喪失感が沸いてきて、プレイ中は悲しい気分が始終つきまとってしまいました。出来れば、彼女と永遠に添い遂げる道を１つぐらいは提示して欲しかった所です。可愛い物好きの設定ももう少し生かして欲しかったかな。
BEST3
悠木陽菜 ＣＶ：鷹月さくら
彼女と姉のかなでは吸血鬼ネタにはほとんど絡んでこないので、純粋に学園ラブストーリーが楽しめます。特に彼女は幼馴染属性を遺憾なく発揮して甲斐甲斐しく主人公の身の回りの世話をしたりするので、通常生活力のあまりに欠如した他ヒロインよりも主人公の”嫁”という観点では一番相応しい人物と言えるかもしれません。安心感も他のヒロインには無いものがありますし。ただ、彼女のストーリーは記憶喪失ネタ以外はこれといって目を見張る程の場面が無く、少し退屈だったのが勿体無いといえば勿体無いか。何かこう二人の関係を一時的にギクシャクさせるような展開を１つ２つ入れて、平坦ストーリーにテコ入れを図るべきだったかもしれませんね。贅沢な意見ですか？