ビーフストロガノフの
ゲーム感想日記
ゲームプレイの感想を中心に、徒然なるままに書き殴り。たまにイラストつき
タカヒロ氏が”みなとそふと”を立ち上げて製作したソフトの第一弾。発売前の評判の異様な高さやアニメ化展開などの話題性もあって相当に期待された作品でしたが、いざプレイしてみれば、あまりにも宣伝負けしている出来でした。特に憤りを覚えたのが各ヒロイン付属のシナリオの長さ。タカヒロ氏の一押しであろう森羅様シナリオはまだボリューム内容共にそれほど文句もありませんでしたが、それ以外のヒロイン（特に夢チーム）の扱いに関しては書き込み足らずが顕著で、さして盛り上がりも見せずにＥＤに至ってしまうあまりに浅い展開にガッカリしきりでした。また、恋愛ゲーとしての側面も過去のタカヒロ作品と比較しても薄いと断言するほか無く、仲も大して進展していない時点でイキナリ始まるＨシーンには興醒めする他ありませんでした。昨今巷に溢れるギャルゲーにありがちな「恋愛過程の希薄化」がタカヒロゲーにも伝播したのかと思うと悲しくもあり寂しくもあり。『姉しよ』でも唐突な締め切り方が不満の一つによく挙げられていた気がしますが、『つよきす』で随分改善されたと思いきや・・・これでは単なる糠喜びでしたかね？ 『きみある』製作終了時には既に次の作品の話をするぐらいですから、タカヒロ氏も実は早くから執事ネタに限界を感じていたのかもしれませんね。
と、文句を言うのはこのぐらいで。上に挙げたようにシナリオの短さや恋愛話の盛り上がりの無さは確かにあるものの、相変わらず日常会話や、姉妹・専属執事・メイド達の横の繋がりの描写は巧いの一言に尽きます。特に過去作品でもそうでしたが、家の中でのドタバタ劇の面白さは折り紙つきですね。それぞれのキャラクターを上手に動かして、日常のちょっとした出来事をネタにして笑いに昇華する。なかなか他のライターには真似の出来ない芸当ですよ。この辺りの展開の妙は「流石はタカヒロ氏ならでは！」といった所ですが、これがなぜに恋愛方面で生かされないのか、毎度の事とはいえ不思議でなりません。もしかしてＨシーンが足枷になっているとか？？？
今回もＣＧ原画は白猫参謀氏が担当していますが、個人的には過去３作品と比べて一番好感が持てました。なんと申しましょうか吊り目の極地（？）を見る思いでした。森羅様＆朱子のイベント絵はどれも本当に好きですね。もう高圧的キャラ（にデレ顔）を描かせたら世界一だと断言しちゃいましょう。巷で色々と言われていますが、是非是非タカヒロゲーの次回作にも参加して欲しいものです。
シナリオの短さが本作の最大の問題ではあるものの、それほどプレイヤーの強い反発に繋がっていない理由の一つはもちろん、声優さんの好演にあると思います。臨場感タップリな演技がシナリオの薄さを巧くカバーした印象です。前作の『つよきす』同様、今回もスペシャルな声優陣を配し、話題性はピカイチでしたね。特に男性キャラでは大佐の声が派手さは無いものの重量感があってまさに”執事”という感じで好印象でした。方や女性声優はあまりに安牌過ぎて面白みはありませんでしたが、それでもタカヒロゲーでおなじみの北都南氏＆海原エレナ氏の演技は突出していました。イベントで演じ分け勝負をしていましたが、もう芸術ですね。素晴らしいの一言。今後も御二方にはなんらかの形でタカヒロゲーに絡んで欲しいものです。
以上、さらっと感想を述べてみましたが、何度も申しますがシナリオの書き込み足らずが致命的です。タカヒロ氏が色々な仕事を一手に抱え込んだ為の時間不足が原因と言われていますが、それはフルプライスで売った以上理由になるとは思えませんし、氏だって口が裂けても言わないでしょう。製作環境が安定する次の作品は本当の意味でみなとそふとの真価が問われる事になりそう。ただ、独立してもパッとしない方が多いこの業界の中では比較的安心して次が期待できるライターさんだと思うので（少なくとも才能の枯渇は本作では感じませんでした）、ゆったりと新作を待ちたいと思います。もちろん、南斗星とラブラブ展開付属のＦＤでもＯＫですがね。
◆ お気に入りＢＥＳＴ３
BEST1
久遠寺森羅 ＣＶ：三咲里奈
流石にタカヒロ氏お得意の高飛車キャラで、しかも敢えて北都南氏をハズして臨んだメインヒロインですから、気合の入りが違うと申しましょうか、シナリオの充実度は折り紙つきです。ほとんど１人で良い所すべて掻っ攫ったようなキャラです。その頂点がなんといっても素敵無敵のエンディング。あまりタカヒロ氏はこういうあからさまなハッピーエンドは好まないのかと思ったのですが、この森羅様で究極の素敵オチを選択した辺りに氏の並々ならぬ意気込みが感じられました。これでは流石にプレイヤーも人気投票で彼女に入れる他ありますまい。もちろん、シナリオに対する不満点も無きにしも非ずですが、他のヒロインに比べれば起承転結がハッキリしていましたし、何よりあのオチでは声高に文句を言うのも躊躇われます。意外にも錬の親父が森羅シナリオのキーでした。彼絡みで燃えも巧みに加味されて、全ヒロイン総じて一番楽しめるストーリーに仕上がっていると思います。故に彼女のシナリオは最後にプレイする事を推奨。声を担当したのは三咲里奈氏。文句はありません。演技も大変に好感が持てましたし。ただ・・・ただ北都南氏に演じて欲しかったなぁ・・・。
BEST2
久遠寺未有 ＣＶ：九条信乃
こちらのレビュー内で何度も言及しているように、筆者には全くロリ属性が無く、この未有にも当然のごとく興味薄だったのですが、プレイ後に印象が１８０度変わってキャラそのものには強い好感を持つようになりました。理由はやはり声優さんの演技が素晴らしかったからです。特に通常の演技は可愛らしくても、ちょっと企み声になると妙にネチっこい喋り方になるのが九条信乃氏の味ですね。腹黒キャラの多いタカヒロシナリオにはうってつけの声優さんでした。ただ、未有に好感が持てても彼女付属のシナリオにはそれほど面白いと感じる場面が少なく、恋愛話も押しが弱くてイマイチ楽しめなかったのが正直な所。物語のキーとなったデニーロネタは随分頑張っていたと思いますが、オチにするには些か大人しい印象でしたし、病気ネタも中途半端。それならいっその事もっと先に進んで起業ネタで落としてくれたほうが座りは良かったかも？
BEST3
朱子 ＣＶ：海原エレナ
もう、「勿体無い」としか言いようの無いキャラ。あと少しストーリーに深みを持たせれば森羅をも凌げるキャラに成り得たのに、各所に設けられた彼女専用のイベントで悉く中途半端に話を端折るもので、結果、彼女の良さがイマイチ遊び手に伝わらなかった実に「勿体無い」キャラでした。特に彼女の生い立ち部分はネタとして幾らでも膨らませそうなのにアッサリと締め切られ、逆に森羅様の秘密を嗅ぎ回る大して面白くも無いネタを最後まで引っ張るバランスの悪さが気になりました。恋愛部分も彼女のシリアスなモノの考え方だけが先行して印象付けられた分、錬と仲良くなっても「それは森羅様の秘密を暴く手助けを錬にさせる為の単なるフリなのでは？」と始終疑問符が付いてまわってしまい、心から楽しめなかったのも勿体無かった。脇役としての彼女の存在感はとても大きかっただけに、朱子メインのシナリオでもそれに相応しい豪快ストーリー＆ギャップの激しいラブストーリーであって欲しかったですね。本当に勿体無い。声はもう海原エレナワールド全開の凄さでした。怒鳴り声が可愛く聞こえるって、あれ？ 俺おかしい？