ビーフストロガノフの
ゲーム感想日記

この青空に約束を－

当方が『ショコラ』『パルフェ』に次いで丸戸作品をプレイした３作品目がこの『こんにゃく』でした。ただ、感想となると前作に比べグレードダウンした印象が強く、総じて「平凡な出来」と言う他なくなってしまうのですが。そう言わざるおえない最大の理由は、ヒロイン付属のシナリオの平均化にあります。前２作のように驚くほど濃密に描写されたヒロインが１人もしくは２人いて、あとは数合わせみたいな極端な造りとは違い、本作品に登場する各ヒロインのシナリオには突出したキャラが居ないものの客寄せパンダ扱いのキャラも存在せず、皆一様のボリュームと内容になっているのです。その為、どのヒロインのストーリーもそれなりに楽しめたのが当ソフトの利点ではあるのですが、逆にこの平均化がかえってヒロインの印象を浅くしてしまい、終わってみるとビックリするほど後に何も残らない無味乾燥な作品と化してしまった感じもするのです。つまり厳しい言い方ですが、丸戸氏が各ヒロインに平等のシナリオサイズを割り振ろうとしても、７０点程度の実に平均的な出来しか望めないという事ですね。まぁ、本作は最大のオチを後日談で語る収束的な造りになっているので、ヒロインに付属するシナリオが少し弱めなのもライターの手腕といえばそれまでなのですが。確かに「約束の日」は大号泣でしたからねぇ・・・。

印象が浅くなったという意味では、ＣＧも原因の１つと言えます。ねこにゃん氏の絵はここにきて妙に線が細めになった為、繊細な感じで綺麗ではある一方、記憶に残るほど印象深いイラストも無くなり明らかにインパクトが不足していました。個人的には髪の色をもう少し濃い目にした方が良かったように思いました。繊細な主線に宮穂のような白髪や海己の薄黄色は全体の色を数段落としてしまう気がするので。青空の下に出る事が多い作品なのですから、影の色も含めもう少し深みのある色を使った方が臨場感は増したのではないでしょうか。

実は筆者が『こんにゃく』をプレイして一番気になったのが声優です。この作品にはヒロインの声を一般向けアニメで名の知れた有名声優が２人担当していて、どうしてもそちらの印象に引きずられてしまうのです。特に奈緒子はビックリでしたね。いや確かに『デモンベイン』にも出ていましたしそうエロゲー出演は珍しくも無いのでしょうが、それでもなぁ・・・。凛奈もあの方の声でなければもっと萌えられた・・・ゲフンゴフン。とにかく、ある程度アニメ声優に詳しい御仁はよほど脳内を空っぽにして当作品にあたらないと、違和感をずっと引きずる事になるので注意が必要です。もちろん、中の人の年齢を考えるなどもっての外ですよ！　ダメですからね！　っていうか、誰だ、担当声優を選んだの！

という事で、細かい部分で言えば色々と問題のある作品でしたが、優しい、ほんわかしたストーリーが好きだという方にならそれなりにお奨めできるソフトです。それと後に『フォセット』というＦＤが発売されたのですが、この中に本編の前日談的なシナリオが幾つか存在するので、『こんにゃく』が気に入ったならば購入するのも手です。これを記述している現在はアニメも放送中ですが、出来はどうなのでしょうね？

◆ お気に入りＢＥＳＴ３

BEST1
六条宮穂　ＣＶ：草柳順子

当方はプレイ前にこの作品の情報をほとんどシャットダウンして臨んだので、遊び始めて一番驚いたのが宮の性格でした。もっと大人しいキャラクターだと思ったのですが全くの勘違い。実際は確かにお金持ちのご令嬢ではありましたが、落ち着いた所などまるで無く、むしろ積極的にトラブルを助長するこまったちゃんでした。とはいえ、海己に次ぐドジッ子体質が功を奏した（？）のか、トラブルメーカーと言えども嫌は感じは微塵も無く、奈緒子直伝の毒舌も単に航の機嫌を逆撫でする程度でむしろ可愛げがありました。ただ、彼女の恋愛感はやはり性格に依存しているのか猪突猛進で積極的なのですが、話の展開上、仲良くなったとしても半年後には離れ離れになる訳で、それを一夏の思い出で済ませてしまうのは粘着質な宮にしてはアッサリし過ぎな気もするのです。まぁ最終的に航が頑張って宮をモノにしてしまうので無問題なのですが、さてあのオチではかえって先が気になって仕方がありません。宮と航が六条家を継いだら面白いのになぁ・・・。声は予想通りの草柳節でしたが、天然ボケっぷりが素敵に冴え渡っていました。

BEST2
浅倉奈緒子　ＣＶ：篠崎双葉

うーん、やはり声優が気になってしまいますねぇ。もちろん演技は素晴らしいですし、聞いているうちに大して気にならなくなったのも事実なのですが、それでも、もう少しマイナーな方に演じてもらっても良かったのでは・・・？　その他で気になった点は特に無く。航が過去に当て馬にされたのは少々可哀相でしたし、シナリオ最後の方での辻崎さんもいい面の皮だなぁとは思いましたが、奈緒子が相手ならば仕方なし。こんな女に惚れたのですから、殴られようが首絞められようが航もただただ信じて付いて行くだけです。そう、奈緒子というキャラも一度決めた相手にはとことん尽くすタイプで、辻崎さんに彼女なりのケジメをつけた後はビックリするぐらい航に一生懸命になるので、ある意味このツンデレっぷりには惚れ惚れしました。ラストの五箇条もなんだか無理に制約を航に課しているみたいで逆に可愛らしかったですね。航もラストに呟いていましたが、好きの度合いは結構、奈緒子＞航だったかも？

BEST3
羽山海己　ＣＶ：石川乃奈

正直、航と結ばれるのは彼女しか居ないでしょう。他のヒロインとのエンディングは妄想エンディングですよ。海己シナリオをプレイした後ではそう考える他ありません。航と海己のストーリー背景には昼メロドラマも真っ青の重い話が横たわっているので、これを解決せずに他ヒロインにかまけて『こんにゃく』を終えるのはあまりにも不誠実過ぎます。もちろん、この問題に決着をつけた暁には航と海己は真に結ばれる訳ですが、やはり「約束の日」に次いで感動しましたね。この２人が一緒に居るのが『こんにゃく』では一番自然なのだと痛感しました。それぐらい磐石のカップルなので彼女のシナリオは最後に選択する事を推奨します。「星の海」ってオチは最高。声は初めて聞いたのですが、繊細な海己の性格を上手に表現していたと思います。

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ビーフストロガノフ(屠絵 味噌)