夜明け前より瑠璃色な

某通販サイトでこの作品のPS2版(しかも限定版)が半額近くで売られているという情報を見て、それならと試しに購入。実際、このぐらいリーズナブルな値段で無い限り、購入に走る事はなかったと思われます。その理由は、非常に個人的な趣向によるものなのですが、絵が当方の好みでは無かったからです。パッと見はなかなかに可愛らしくて好感が持てるのですが、どうも描き分けがあまり得意ではない様子で、どのキャラも同じ顔に見えてしまうのです。やはりギャルゲーをやる上で描き分けに不満を覚えると、プレイする際に感情移入の妨げになると思うのですが。それでも世間の本作品に対する評価は決して低くはありませんし、あまり出来は褒められたものでは無かったようですが、アニメ化にもなったぐらいですから、モノは試し+限定版の値段の安さにも押されてプレイする事にした次第です。

それで、実際にプレイしての感想ですが、マイナス点は幾らかあるものの、非常に良く出来た作品でした。まずもって、ギャルゲーでこれだけ演出面で豪華な作品はなかなか無いのではないでしょうか。普通はPC版からの移植ですと見た目からして劣ってしまうのが常ですが、元のPC版は未プレイではありますが、それでも映像の美麗さは決して劣ってはいないと断言してしまう程に気合が入っていました。ムービー他、イベント絵のクオリティもとても高く、ハッキリ申せばキャラの描き分けの無さは全てチャラにしても良いぐらいです。それと、音楽も画の出来に負けず劣らず頑張っていたと思います。特にボーカル付きの曲が何曲もあって(全部で4曲?)、それらが重要なイベントシーンで効果的に使われていたのにも感心しました。個人的には『下弦の月』という曲がお気に入りです。ボーカルの選択も随分拘ったのではないでしょうかね。とにかくシナリオを盛り上げるべく存在するありとあらゆる演出面で、この作品は文句無しの出来であると評価します。いやはや、ここまでクオリティ面で好感が持てたギャルゲー作品はPC版の『Fate/staynight』以来ではないかと。

ただ、この豪華な演出に比べると肝心要のシナリオ自体にややパワー不足を感じました。確かにホンワカした優しいストーリー展開がメインの作品で有るが故に、起伏の無さが物足りなさに直結してしまった部分も多少はあるかもしれませんが、それにしてもフィーナは別として、地球人ヒロインに付属するシナリオには、恋愛における過程がおざなり気味でした。強引過ぎると言っても良いかもしれません。まぁ元はエロゲーですし少々の強引さは笑ってスルーすべきなのでしょうが、ミアやさやかさんに関してはもう少し書きようがあったのでは?と感じるのですが・・・。とにかく、このゲームにはフィーナという超強力メインヒロインがデン!と存在している為に(しかも最初のプレイは必ずフィーナシナリオになる)、どうプレイしようがフィーナ以外のヒロインはサブキャラに成り下がる他なく、かえって他ヒロインのシナリオの淡白さに拍車が掛かっているのは明白。この点をプレイ前にしっかり踏まえておかないと、予想以上にガッカリする方が頻出するかもしれないので注意が必要です。そうですね、「このソフトにはヒロインがフィーナ1人しかいない」と思い込んでプレイするのが、『よあけな』に対する誠に正しい姿勢なのではないでしょうか。

◆ お気に入りBEST3

BEST1
フィーナ・ファム・アーシュライト CV:生天目仁美

当ゲームの最高最強メインヒロイン。どのぐらい最強かと申しますと、彼女のシナリオでヒロインの座は「私!」と断定するぐらいガッチリと主人公の首根っこを掴んでしまうので、その後プレイする事になるサブヒロインのシナリオの何と座り心地の悪い事。常にフィーナから咎める目が向けられている気がして、思わずシナリオスキップを押しまくって最終シナリオに突入しないと「何かマズイのではないか?」と疑心暗鬼になる程に最強です。これで普段の立ち居振舞いからして最強なのですから、彼女に関してはもう何も言う事がありません。完璧超人過ぎて、かえって当方からすると息が詰りそうなのですが、そんな彼女に惚れた達哉君は頑張る他ないのであります。またこの主人公の達哉君がギャルゲー主人公よろしく平々凡々とした、何のとりえも無い、実に真っ白な人なのですが、きっと彼女の支えになると決めたあの時から頑張って頑張ってフィーナ色に染まっていくのでしょうね。間違いなくフィーナの尻に敷かれるとは思いますが、それでも良き夫婦になるのは間違いの無い所。因みに彼女のシナリオで好きなエピソードは2つあって、1つは勿論あのカレンさんのテストですが、もう1つは「よあけな」シナリオラストの2人の結婚のシーン。結婚が8年後ってリアリティありすぎて本当、好きだなぁ・・・。声はもう有名声優の仲間入りをしたと思しき生天目氏。個人的には某『ToHeart2』の「これで勝ったと思うなよ~」の人の印象が強かったもので、フィーナのキリッとした演技を聞いた時は驚いたものでした。

BEST2
エステル・フリージア CV:結本ミチル

クリアしてから知ったのですが、この方はPS2オリジナルヒロインだったのですね。月と地球の関係をよりプレイヤーに明確化させる意味合いで新たに生み出されたキャラだったらしく、確かにフィーナのあの大演説シーンをより趣深いものにする為には、エステルの存在は必要不可欠たったでしょう。それ故、やはりエステルのいないPC版はその点で説明不足だったと多くの方が感じたようで、もし今後この作品をプレイしようと思う方がいるとしたら、素直に彼女のいるPS2版をお奨めします。さてこのエステルですが、最近ハヤリのツンデレ高飛車ねーちゃんで、最初まったく主人公に打ち解けないのもツンデレシナリオのテンプレートそのままなのですが、彼女が意固地になる理由が月と地球の関係にも絡んでくるのでなかなかに根深く、しかも彼女も今まで知らなかったとある事情の発覚により更に内に閉じこもりガチになります。ここで一肌脱ぐのがこのシナリオではフィーナに見向きもしないチャレンジャー達哉君なのですが、フィーナシナリオでの彼とは明らかに別人では?と疑う程に頼りがいのある雄姿が見れます。もう恐ろしくカッコイイのです。フィーナシナリオでは後手に回るのが常だった達哉君が、ここでは先手を打って反発または消沈しているエステルさんを盛り立てるのですね。見学ツアーの成功はまさに彼あってのものでした。この見学ツアーのおかげもあり次第に彼の存在を好ましく思うようになったエステルさんは、最後にはお付き合いするまでに心を許すのですが、おまけシナリオ『罪と罰』を見る限りではやはり達哉君はここでも尻に敷かれるのは間違いなさそう。懺悔に行ったら殴られるって、どこまでSやねん。

BEST3
鷹見沢菜月 CV:氷青

幼馴染属性を遺憾なく発揮する実に幼馴染らしいキャラ。安牌すぎて物足りなく感じそうですが、主人公の手綱を握ろうとする上位ヒロインが多い本作品で唯一と言っても良いぐらいに同じ目線で会話できるキャラなので、何故だか物凄い安心感が沸きますし、他の作品では手垢に塗れた”幼馴染”という属性が光り輝いて見える稀有なヒロインでした。それと、主人公に対する恋心にシナリオ途中になって初めて気付くというのも、幼馴染属性としてはなかなか珍しい展開で面白かったですね。彼女のシナリオに入ると達哉君が彼らしい大忘却を犯して菜月も苦虫を噛み潰す訳ですが、すかさず決めた達哉君お得意の後手フォローが功を奏して仲直りをした暁には、すでに夫婦のような雰囲気を醸し出していて「然も有りなん」なのでした。エンディングはフィーナの次に好きですね。個人的には将来、動物病院を2人で経営するよりも、マスターとトラットリア左門をまた盛り上げていって欲しいかな。声優さんは”ひょうせい”と読むのでしょうか? このホンワカ具合、かなり好きかも。

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